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ダークヒーロー★しらゆき(92)       魔王様と肖像画
長老の家(ミニ)
 街の長老の家なんて言うから、一体どんな豪邸かと思っていたけれど、案外普通な家ね。外から見た時はもっと大きそうに見えたけれど、今こうして家の中に入ってみて、それから家の外観を思い出してみて、この家が大きく見えたのは隣にある大きな鶏小屋のせいだったのね。なんて納得する。
鶏小屋

 まぁ、こんなものよね。
 街で一番偉いのなんていっても、所詮は片田舎の長老。魔界にあるわらわの大きなお城みたいなのを期待するなんて、それはそれで酷な話だわ。

スタンの肖像画
 けれど、と、わらわは思いを巡らせる。けれどあの肖像画はとても良かったわ。あのあえて褪せたようなセピア色の色使いに、堂々と、そしてどこか渋い顔で描かれたスタンの絵はなかなかに見物だったわ。本人そっくりというか、むしろ本人よりも随分と渋かったもの。
 やっぱり肖像画は良いわ。偉い人物なら、肖像画の一枚や二枚持っていて当然で、肖像画を所有していると言うことは美学ですらあるもの。高名な魔法使いか、隠居した武術の達人に見えたスタンは、実は戦いなんてからっきしの、普通の老人だったとわらわはベアトに言われて気が付いて、それで少し彼を見くびったりもした。街をひとつ治めている「偉いの」のくせに戦いも出来ないなんて!ってね。けれど、わらわはスタンを見直したわ。だってスタンは、上に立つ者としての、「偉いの」としての美学をきちんと持っていたんだもの。
 自分が描かれた肖像画を所有し、飾る。
 それは、人の上に立つ者の、美学であり、もはや義務だわ!

 そんな肖像画に敬意を示し、わらわはあえて多くを語ることはせずに、ジェイの説明にもただ、「ふぅん。」と軽く頷く程度にしておいた。
 厳か。厳かだわ、ここは。
 あえて多くを語らなかったわらわに倣うように、ベアトもジェイも、何やら神妙な面持ちで、静々とジェイの部屋へと向かって廊下を歩いている。なんて厳かな空気なの。わらわは一枚の肖像画がもたらした奇跡に、思わず感極まってしまったわ。

ジェイスタンプ
ここです。
 そして、そんな厳かさの中、ジェイは廊下の突き当りにある扉の前で止まって、言った。ここがジェイの部屋ね。扉がゆっくりと開かれる。
 開かれた扉の先の、ジェイの部屋には大きな大きな、そしてどっしりとした造りで飾り彫刻の施された本棚がいくつか置かれていた。その本棚にはたくさんの本が、びっしりと詰まっている。開かれた扉の枠に四角く切り取られたのは、まさに本の虫の住処。

魔王スタンプ(ヘネシス)
へぇ・・・、
 と、わらわが納得の声を漏らし、その後に続ける言葉を口から取り出そうとしているそばで、
もふもふベアト
わぁ、本がいっぱいですね。
 珍しく、ベアトの方が先に言葉を発した。

もふもふベアト
面白そう。見てみても良いですか?

ジェイスタンプ
えぇ、どうぞ。
 許可を求めつつも、許可が出る前に部屋の中へと楽しげな足取りで歩んでいくベアト。そんな彼女は本棚の前まで行くと、その中にズラっと並べられた本の背表紙を上から順番に流し見ていく。ベアトの頭が、彼女のその視線に合わせて右から左へと何往復も、行ったり来たりしている。そんなベアトの頭は、時折その動きをはたと止めて、視線を一点に注ぐ。そうした後で再び頭が動き始めることもあれば、その気になったのであろう本を手に取って、ぱらぱらと中身を確認したりもする。ベアトはジェイの本棚に夢中になっていた。
 そういえば、この子も相当な本の虫だったわねぇ。
 夢中なベアトを見ながら、わらわは思い出す。出会ったばかりの頃のベアトは、いつもわらわのお城の図書室に居て、山のようにある本に囲まれて、いつも読書をしていたわ。魔法に科学、学術書に哲学書、彼女は色々な本を読んでいた。だけど、物語はあまり読まなかったわね。
 ベアトはそうして何度か本を手に取り、ぱらぱらとめくり、棚に戻してまた物色し、また本を取って、と繰り返しながら、本棚を見ていく。やがて全て見終わったのであろうベアトは、しかしこちらに向き直ることなどなく、また一冊の本を取り出して、今度はぱらぱらとではなくしげしげと、その紙面を目で追っていた。そしてそんなベアトの背中を見守る、わらわとジェイ。

ジェイスタンプ
楽しそうですね。

魔王スタンプ(ヘネシス)
そうね。あの子ったら生粋の本の虫だもの。きっと貴方以上だわ。

ジェイスタンプ
あはは、それは頼もしいですね。
 そう言って、笑うジェイ。だけどこの子は分かっていない。ベアトをこのまま放っておいたらどうなるかと言うことを。

魔王スタンプ(ヘネシス)
まぁ、あの子の賢さはわらわが保証するわ。だけどだからといって、貴方は今笑っている場合ではないのよ?

ジェイスタンプ
え?

魔王スタンプ(ヘネシス)
放っておいたら、あそこにある本全部読むまで、あの子はあのままだわ。まぁあの程度の量だし、そんなに難しい物もなさそうだし、放っておいても十日もあれば終わるでしょうけれど、さすがに困るでしょう?その間は貴方の部屋も占領されちゃうわけだしね。
 そう、ベアトは一度読みはじめると止まらないのだ。一度夢中になったあの子は食事も睡眠も忘れて、ただひたすらに本に向かい続ける。決めた量を読み終わるか、わらわに声をかけられるか、急にハっと我に返るか、それまであの子は本を読み続けるのだ。

ジェイスタンプ
そうなんですか・・・?冗談じゃなくって?

魔王スタンプ(ヘネシス)
えぇ、冗談ではないわ。わらわの住んでいた魔界にはそういうのがいっぱい居るの。ここじゃそうそう、そんなのは居ないみたいだけれどね。

ジェイスタンプ
へぇ・・・。面白いですね。
 面白いのかしら・・・?
 ベアトもベアトだけど、この子もこの子でなんかずれてるわね。

ジェイスタンプ
と言うか、魔王さん。難しい本もなさそうって言ってましたけど、ここから見て本の内容が分かるんですか?

魔王スタンプ(ヘネシス)
えぇ、わらわ目が良いからこのくらいの距離なら背表紙の字なんてはっきり読めるわ。

ジェイスタンプ
内容も?

魔王スタンプ(ヘネシス)
なんとなくね。たくさん読んでたらタイトルや外見で大体分かるようになっちゃったの。

ジェイスタンプ
へぇ・・・。魔界って面白いなぁ。
 言葉通り、いとも面白そうに、感慨深そうに言うジェイ。わらわもそんな風に感嘆されると、悪い気はしないわ。けれど、今はそうとばかりも言っていられないの。このまま放っておけばベアトは本当に十日かけてあの本棚を読みつくしてしまう。わらわ達はここに読書しに来たわけではない。ジェイに魔法を教えに来たのよ。

魔王スタンプ(ヘネシス)
ちょっと、ここで待っていなさい。
 わらわはジェイにそう言って、部屋の奥へと、ベアトの方へと歩いていく。夢中で本を読み続けるベアトは、そんなわらわに気付いた素振りを全く見せずに、本を読み続ける。ハインズにもらったと言う白いセーターに包まれたベアトの背中をしばし見詰める。こうして見ると、この子もあんまり変わらないわねぇ。
 まずは、何も言わずに肩を叩いてみる。
 ベアト、微動だにせず。肩を叩かれたことには全く反応しないで、ベアトは本を読み続ける。
 もう一度叩き、今度は手をその肩に乗せてみる。
 今度は、うっとおしそうに肩を動かして手を退けてしまった。

魔王スタンプ(ヘネシス)
ベアト。
 今度は、肩は叩かずに呼びかけてみる。

もふもふベアト
はい、魔王さま?
 するとベアトはぱたんと本を閉じて、わらわの方へとすぐに振り返った。

魔王スタンプ(ヘネシス)
貴女、相変わらずねぇ・・・。

もふもふベアト
へ?何がですか?
 しかしベアトはきょとんとして、そんなことを言う。昔からこんな感じなのだ、この子は。

魔王スタンプ(ヘネシス)
いえ、何でもないわ。それより、ジェイが待っているわよ。貴女あの子のお師匠様になったんだから、しゃきっとしなさい。

もふもふベアト
あ、そうでしたね。魔法を教えるんでした。でもベアト、今は魔法にあんまり自信が・・・。

魔王スタンプ(ヘネシス)
大丈夫よ。魔法が使えなくたって、貴女の頭の中は相変わらずみたいだもの。さぁ、ジェイ。こっちに来なさい。お師匠様が魔法を教えてくれるわよ。
 呼ばれたジェイは、嬉しそうにこちらへと歩いてくる。平和で長閑な街に住む本の虫と、魔界からやってきた偉大なる魔王軍との、魔法勉強会が始まるわ。


もふもふベアト
肖像画一枚から分かる、魔王さまのずれっぷり。

魔王スタンプ(ヘネシス)
え?何が?

もふもふベアト
何でもないです。
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しらゆき

Author:しらゆき
メイプルストーリー、いばらでのんびり遊んでます。

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