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魔王城へようこそ! サンプル(1)
 近日発売予定!
 の、魔王しらゆきの子供の頃のお話、
「魔王城へようこそ!」
 のサンプルです。
 一通りの完成後に大幅に見直しをして手直しも加えると思うので、これで完成形ではありませんが、ひとまずのサンプルとして、幼い魔王さまのお話を、お楽しみいただければ幸いです。


 薄暗い部屋の中、そんな中にも差し込むわずかな光を逃さず捕まえて、黄金の王冠は自分自身と、自分を飾るまばゆいばかりに散りばめられた宝石で、しっかりと捕まえたわずかな光をキラキラと反射させている。宝石から反射した光は、それ自体もまた白い宝石のように、真珠のように、薄暗い部屋の中を楽しげに泳いでいる。まるで宝石から宝石が生まれたみたい。
 薄暗い部屋の中、大きな大きなアメジストは、その深い深い紫色で、王冠とは反対に部屋の中の暗闇を捕まえて、その透き通る紫の中に気の遠くなるような深淵を湛えている。
 薄暗い部屋の中、弱々しく燃える蝋燭の火と、その隣に置かれた真っ赤なルビー。なんだか元気の無い蝋燭の火は、まるで頭を垂れているかのように弱々しく燃えていて、けれどそれでいてとても赤々としていて、そんな赤い光を受けて、蝋燭の隣にある真っ赤なルビーは、隣に置かれた本物の火以上に、まるで火のように赤く赤く、激しく燃えて輝いていた。
 薄暗い部屋の、扉が、キィと音を立てながらゆっくりと開く。
 薄暗い部屋に、徐々に差し込む強い光。ここはもう、薄暗い部屋ではない。
 明るくなったこの部屋の出口に立つ、背に真っ白な光を受ける黒い影。光と影の、白と黒の、強いコントラストが、心の中の不安を揺さぶる。
 ・・・・・・・・・・・・・・・。

「魔王さま、もう朝ですよ。」
 声がかけられる。
 しかしその声は、薄暗い部屋に唐突に現れたあの黒い影の方からではなく、かといって背後からでもなく、どこからともなくと、不思議な響きで聞こえてきた。
 聞き慣れた、安心できる声。
「もう、いい加減起きてください。」
 ふと、部屋の中にあった王冠が消えてしまった。
 まるで蝋燭の火をふっと吹き消したように、王冠は消えて煙になってしまった。
 王冠の残した煙が空気に混ざりかき消えて行く中で、あの深い深い紫のアメジストも、同じようにして消えてしまった。あの紫、少し気に入っていたのに。
 そして最後に、赤々と燃えているルビーの隣の、蝋燭の火が消えてしまった。蝋燭の火が消えた途端、部屋の中は完全な暗闇に満たされる。
 おかしいなぁ、この部屋にある小さな窓には木の板が打ち付けられていて、しかしそれでもそこからは、わずかな陽の光が差し込んでいて、さらに先ほど開いたあの扉からはもっと強い光が差し込んでいて、だから蝋燭がこの部屋の唯一の光源というわけではなかったのに。
「ほらっ、魔王さまなのにお寝坊さんだなんて、笑われちゃいますよっ。」
 そう言ってフレデリカは、わらわの身体を優しく包んでいた、柔らかくて暖かい毛布をはぎ取ってしまったわ。
「おはようございます、魔王さま。」
「・・・おはよう、フレデリカ。」
 わらわはどうやら眠っていたみたい。そういえば、昨日の夜にベッドの中でフレデリカに絵本を読んでもらっていたのよね。絵本のお話の途中までは思い出せるのに、肝心の結末が思い出せないってことは、きっと途中で眠ってしまったのね。
 つまり、あの部屋も宝石たちも、夢の中のものだったのね。
 寝ぼけてボヤボヤする頭でそのことを理解して、綺麗な宝石が夢だったと理解して少し残念な気持ちと、あの不安になる薄暗い部屋が現実じゃなかったということに安心する気持ちに、わらわは板挟みになる。そんな板挟みする気持ちの中で、勝っているのは安心感。綺麗な宝石を残念がる気持ちよりも、薄暗い部屋から解放された安心感の方がわらわの中で勝っていたわ。けれどわらわは、あの紫のアメジストだけは結構気に入っていたから、それだけはやっぱり残念になって、夢を夢と認めたくない時にするあのお決まりの質問を、わらわはしてみる。
「フレデリカ、わらわのアメジストは?」
「アメジスト?」
 フレデリカは少しだけ不思議そうな顔をして、けれどすぐに、今度は納得したような顔になって、
「ふふ、魔王さまったら、そんな夢を見ていたんですか?」
 まぁ、夢でよかったわ。
 確かにあのアメジストは気に入ったけれど、やっぱりあの部屋は少し怖かったもの。

「魔王さま、もう大きいんですからお着替えは自分でしてくださいね。」
 それからわらわはフレデリカに言われて、朝の身支度をする。
 パジャマを脱いで、少しダボダボする黒いローブに着替える。このローブ、恰好良いけれど少し着心地悪いのよね。それにたまにはピンクとか緑とか、いろんな色のものを着てみたいわ。着替えが済んだら今度はうがいと顔洗い。フレデリカは本当は、朝起きたら朝ご飯の前にまず歯を磨く人で、わらわにもそうさせたいらしいのだけれど、朝ご飯のずっと前に起きるフレデリカと違って、わらわは朝ご飯の直前に起きるから、そんなご飯の前に歯磨きなんてしたら美味しいご飯の味がわからなくなっちゃうから、こうしてうがいだけで済ませてくれているの。そしてうがいをしたら顔を洗わなくっちゃ。わらわは顔を洗い始める前に、鏡をのぞき込む。
 寝ぼけて薄目の鏡の中のわらわが、わらわを見返していたわ。
 なんだかだらしない顔ね。ちょっとだけど目ヤニなんかついてるし、もしかしてこれってよだれのあと?
 わらわはそんなだらしない自分の顔を見て少し恥ずかしくなって、急いで、そして丁寧に、顔を洗い始めたわ。蛇口から流れてくる冷たい水が気持ち良い。寝ぼけてボヤボヤする頭に顔を洗う水の冷たさがしみて、わらわの頭はだんだんとはっきりしてくる。だいぶ頭がはっきりしたところで、顔を上げて改めて鏡を覗く。
 よくクリクリで可愛らしいとみんなが褒めてくれる紫の目が、今度ははっきりと開いてわらわを見返したわ。それにほっぺたの下のほうに付いていたよだれのあとも消えて、わらわのほっぺたはいつも通りのつややかで柔らかな姿を取り戻したわ。このほっぺたのこともみんな褒めてくれて、今言った「つややかで柔らか」って言うのは、前にフレデリカに言われた言葉なのよ。フレデリカったらわらわのほっぺたが本当に好きみたいで、よく指先でつついたり、自分のほっぺたをわらわのほっぺたにくっつけて、スリスリしたりするの。わらわはいつもやめてって言うのだけど、フレデリカはなかなかやめてくれなくって、でもわらわ実は、フレデリカにほっぺたをスリスリされるのが好きだから、あんまり本気でやめてって言わないの。まぁ、時々フレデリカがやり過ぎてほっぺたが痛くなるから、それは嫌だけどね。
 そして、わらわは自分の頭に目を向ける。
 伸ばしている途中の、肩に届くくらいの少し青みがかった黒い髪。その髪の生えるわらわの頭のてっぺんには、鮮やかな紫色をした、小さな小さなツノが二つ、控えめに生えている。
 わらわのお気に入りのツノ。
 わらわ自慢の、可愛らしいツノ。
 みんなわらわの目とかほっぺたをよく褒めてくれるのだけど、実はわらわ、自分のことだからかよく分かっていないの。でも、このツノだけは本当にお気に入り。ツノはわらわの大好きな紫色をしていて、しかもその紫はとっても鮮やかな紫で、小さく、可愛らしく、わらわの頭の上で自己主張してるの。もしかしたら、このツノが気に入ったから、わらわは紫色が好きなのかもしれないわ。
 そしてそんな風に考え事をしながら、鏡に映る自慢のツノを少し眺めて、わらわはフレデリカの待つ廊下へと出る。
「お待たせ、フレデリカ。」
「はい、魔王さま。」
 返事をしたフレデリカはわらわの顔をのぞき込んで、悪戯っぽく笑う。
「ご自慢のツノは、今日も可愛く決まっていましたか?」
 どうやら、フレデリカはわらわのことは何でもお見通しみたい。わらわはツノがお気に入りだって誰にも言ったことがないのに、フレデリカにはお見通しだし、鏡で念入りにツノのチェックをしたこともお見通しみたい。
「もう、それ内緒なんだから!」
 わらわは少しむくれて、フレデリカに注意をする。誰かに聞かれたらどうするの?
「大丈夫ですよ。誰にも聞かれていません。」
 そしてそんなわらわの注意を受けて、フレデリカはこともなげにそう言う。フレデリカはすごくしっかり者だから、内緒の話をするときは周りに誰もいないか確認するし、ちゃんと秘密は守ってくれるの。もちろん、盗み聞きしようとしたって無駄よ。フレデリカはしっかり者の上にすごく優秀だから、誰かが隠れていたってすぐに気付いちゃうんだから。

 そんなフレデリカと一緒に廊下を歩いてしばらくすると、少しずつ人の姿が増えてきたわ。
 今歩いている廊下には窓がほとんど無くって、明かりは壁に等間隔でお行儀よく並んでいるロウソクに頼っているわ。だからこの廊下はいつでも薄暗くって、だけど夜中にトイレに行きたくなったわらわや、それから夜中でも頑張ってお仕事をしてくれている人たちのために、ロウソクの火が消えることはないの。だから「いつでも」薄暗いのよ。ちなみに、この薄明るさは演出のためでもあるって昔聞いたことがあるけれど、それって一体何の演出かしら。
 そんな廊下ですれ違うのは、ほとんどがメイドと執事。みんなわらわとすれ違う度に丁寧にお辞儀をしてくれたり、
「おはようございます、魔王さま。」
 って、挨拶をしてくれるわ。
 わらわ、良い子だからちゃんとお辞儀と挨拶を返すの。でもね、たまにはわらわから挨拶したいなって思うのだけど、それが意外と難しくて、なかなか上手くいかないのよ。別に、先に挨拶するのが恥ずかしいとか、そういうわけじゃないの。ただ、わらわがどんなに気を付けていても、みんな先にわらわに気付いて、素早く挨拶をしてくるの。わらわが先に挨拶しようと口を開こうとすれば、それを察していつもよりもっと早く挨拶してくるのよ?わらわ、みんなが意地悪するって、先に挨拶させてくれないって、フレデリカに言ったら、
「ふふ、それは意地悪してるわけじゃないんですよ。みんなベテランなんです。」
 って、言っていたわ。わらわはそれが、特に「ベテラン」ってところがよく分からなくってフレデリカに聞き返したら、
「うーん…。」
 フレデリカは少しだけ俯いて考えてから、顔をパッとあげてニッコリ笑って、
「みんな魔王さまが大好きってことです!」
 って嬉しそうに言ったわ。
 わらわは相変わらずよくわからなかったけれど、大好きって言われて少し照れくさかったけれど嬉しかったし、意地悪じゃないってこともわかったから納得して、
「そっか。」
 って、少し照れながら言ったわ。
 そんなわらわを見たフレデリカは、
「まぁ、私が一番魔王さまを好きですけどね!」
 って言って、わらわを揉みくちゃに撫でまわしたわ。フレデリカはいつもわらわを撫でてくれるし、ほっぺたスリスリとかをしてくるけれど、ここまで揉みくちゃにされるのは珍しかったわ。その時のわらわは、少しうっとおしそうにしてみたのだけれど、本当はすごく嬉しかったのよね。あ、これも内緒よ?


続きを、明日の更新で載せます。
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Author:しらゆき
メイプルストーリー、いばらでのんびり遊んでます。

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