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ダークヒーロ★しらゆき(110)       魔王からは逃げられない
魔王スタンプ(ヘネシス)
だから今度は、わらわが貴方達を躍らせてあげる。楽しい舞踏会は、これからよ。
 と、魔王さまは言いました。
 赤い赤い唇の端に邪悪を乗せて。
 白い白い美しい肌に狂気を浮かべて。

 舞踏会が、始まりました。
 伝説の鉾でゴーレムの拳を防いだ魔王さまと、防がれてしまった拳に力を込めて押し切ろうとするゴーレム。
 まるで、鍔迫り合いのようです。
 魔王さまの鉾と、ゴーレムの拳が拮抗し合い、鍔迫り合いをしています。
 けれど、この鍔迫り合いに見えるものは、パッと見確かにそう見えながらも、ある一点において決して鍔迫り合いだとは言えませんでした。
 鍔迫り合いは、お互いの力が拮抗している時に起こるもの。
 力の拮抗した二人の振るう刀がぶつかり合い、互いに力を込め合い拮抗するのが鍔迫り合い。そこには実力が近い者同士という条件が必要です。
 けれど、魔王さまとゴーレムの間には、明らかな、そして大幅な、実力の差がありました。
 魔王さまに拳ひとつかすらせることの出来なかったゴーレムは、今も魔王さまにいともたやすくその攻撃を防がれて、防がれたその拳に力を込めながらもそれは魔王さまにやすやすと押さえられていました。
 一目みただけでは、身体の大きなゴーレムの拳に、魔王さまが押さえつけられているように見えるこの構図も、その実は反対でした。
 魔王さまにゴーレムが抑えつけられているのです。
 渾身の力で繰り出した拳をたやすく防がれてしまったゴーレムは、今やその拳を引っ込めることが出来ず、無為と知りながらもただただその拳に力を込め続けるしかできないのです。
 そう、無為と知りながらも。
 そうと知りながらもそうせざるを得ないゴーレムの顔には、無機質と無表情の中に恐怖が見て取れました。
 拳を引けば、何か恐ろしいことが起こる。
 力を弱めれば、きっと恐ろしい目に合う。
 魔王さまの赤い唇と白い肌に浮かぶ黒い邪悪に、ゴーレムは今ようやく気づき、それに必死で抗っていたのでした。
 そうして、なおも力を込め続けるゴーレムと、それを邪悪な表情でやすやすと受け止め続ける魔王さま。そしてその二人を見守るように立ち尽くす周りのゴーレムたち。
 ほとんど動きの無い静かなこの光景は、先ほどまでの激しい踊りの続きのように見えました。
 激しい踊りの後の、緩慢なひと時。
 ほとんど動きの無い、見つめ合うにして手を取り合う、緩やかな社交の踊りの一幕。
 邪悪でありながらもとてつもない艶を含んだ微笑を湛える魔王さま。
 まさに、魔性でした。
 魔王の持つ魔性が、そこにはありました。
 そんな魔性に慄きながらも恍惚とするゴーレムは、きっと力を込め続けて疲れてしまったのでしょう。

魔王スタンプ(ヘネシス)
あら?もう疲れてしまったの?
 しっとり濡れて赤く煌めく唇で、魔王さまは問いかけました。
魔王スタンプ(ヘネシス)
「ふふ、仕方ないわね。ならわらわは、次のお相手を探そうかしら?
 そう言って、白い細腕に伝説の鉾を持ち、彼の拳にあてがったまま、周りをぐるりと見回しました。そして、

魔王スタンプ(ヘネシス)
貴方はゆっくり、休んでいなさい。
 魔王さまの発したその言葉。
 まるでその言葉に侵されてしまったかのように、魔王さまの周りの空気が、

 ぞっ。

 という気配を伴って、変質しました。
 口の端に、表情に見えていた魔王さまの邪悪が、その言葉を皮切りに全身から漏れだし始めました。
 まるでその言葉に邪悪を乗せて放ったかのように、音の広がりとともに邪悪は波のように広がっていきます。
 緩慢な踊りを踊る二人を見詰めていた周りのゴーレムは、その邪悪にハッとなって一斉に魔王さまに襲い掛かりました。広がる邪悪に慄いて、そうせずにはいられなかったとでも言うかのように。
 それよりも、一瞬速く。
 魔王さまは繰り出された拳にあてがっていた伝説の鉾を素早く、軽く引きました。
 疲れ切りながらもなおも拳に力を込めていたゴーレムは、唐突なその出来事に、ぐらりと姿勢を崩してしまいます。崩してしまいますが、倒れて仕舞わないように、脚に力を込めて必死に踏ん張り、彼は踏みとどまりました。
 が、魔王さまは、やっとの思いで踏みとどまった彼に容赦などしませんでした。
 ぐらりと傾いだその身体に、魔王さまの邪悪を受けて恐怖と恍惚に満たされた石の身体に、魔王さまは鞭打つように鉾を振るいました。
 初めに、腕に一発。
 前のめりに傾いだ身体の先頭を切るその腕を、横ざまにカンっと薙ぎ払って、魔王さまはゴーレムの体勢をさらに崩しました。
 そして体勢を崩し、バランスを完全に失ったその身体のど真ん中、背中の辺りを狙って、魔王さまは鉾を両手で握り直し、力を込めてブンと振り抜きました。
 歴史の重みを背負った石の背中に、勢いよく振り抜かれた伝説の鉾。
 石の身体が、そこに背負った歴史が、ガラン、ガランと、少し切ない音を立てて崩れる。
 鉾が振り抜かれた背中が崩れ、そこから浸食されるように、石の身体が、苔むした歴史が、瓦解していく。
 後に残ったのは、地面に落ちたいくつもの石のブロック。
 ゴーレムの身体を構成していた石のブロックが、重厚な乾いた音を立てて幾重にも積み重なっていく。
 魔王さまの前には、積み上がった石のブロックの山が。
 そして歴史がくずおれたその場所目掛けて、そこを囲い込むかのようにして、勢いよく向かってくるたくさんのゴーレムたち。
 ゴーレムたちがその場所に殺到し、到達した時、そこになだれ込んだたくさんのゴーレムたちの中から、空気を変質させ漏れ出していた邪悪が爆発しました。
 空気に満ち漂っていた邪悪な空気は、ゴーレムたちが殺到したことで生まれた風の流れに乱され、辺り一面に滅茶苦茶に飛び散っていきました。
 それだけじゃなく、その瞬間に、空気に邪悪を漂わせていたその場所を爆心地にして、さらに大きな邪悪が発散され、それはまるで爆発のようでした。
 目には見えないけれど、確かに肌で感じる、とても大規模な爆発。
 魔王さまを取り囲んで、四方八方から一斉に殴りかかったゴーレムたちの中に、しかし魔王さまは居ませんでした。
 魔王さまは先程までのあの激しいダンスの続きでも踊るかのように、ゴーレムたちの腕を巧みに、そして目にも止まらぬ素早さで潜り抜け、四方八方から襲い掛かったゴーレムの円から抜け出していました。
 ゴーレムの円の外側。
 その円の一点に、魔王さまは居ました。
 踊りを心の底から楽しむように溌剌とした顔で。その顔に溌剌とした狂気を乗せて。
 そして、再び振り抜かれる伝説の鉾。
 その一閃は過たず相手を捉え、硬質な音を辺りに響かせました。
 鉾を振り抜き風を切るブンという音と、それが石の身体に当たり立てる硬質な音。
 それに続く、苔むした石の身体が瓦解していく凄絶な音。
 踊りを踊るには、音楽が必要です。
 踊りとは、感情を揺さぶるような音楽を全身で表現してしまう、最も豊かな感情表現の一つで、全身で奏でる音楽であり、表情です。
 振り抜かれる鉾の音も、それが石の身体を打ちのめす音も、石が、歴史が、瓦解していく音も、まるで魔王さまたちの踊りを彩る、踊りながら奏でる、音楽のようでした。
 そんな音楽を奏でながら、円を描くように八方から殺到したゴーレムたちの形作っていた石のサークルが、欠ける。
 一点が欠けて、崩れてしまった石の円。
 そして欠けた石の円は、次の瞬間には霧散するように散り散りになり、円からいくつもの点へと変わりました。
 ある者は魔王さまから離れ距離を取り、ある者は続けざまに魔王さまに襲い掛かる。
 散り散りに、それぞれに、魔王さまに戦いを挑むゴーレムたち。
 その中に、逃げ出す者はただの一体も居ませんでした。
 無駄と知りながらも襲い掛かるゴーレムはもちろん、ひとまずの距離を取るゴーレムも、決して逃げ出すことはしませんでした。
 それは、彼らがこの場所を守る守護者のような存在だからなのかもしれません。
 ゴーレムとは自らを生み出した魔法使いを、自らの生まれた場所を、守ろうとするものです。
 前者のゴーレムはそのために生み出されたようなものだから、当然のようにそうします。後者のゴーレムは、誰に命じられたわけでもなく自然と、自分の意志で、そうするものです。少なくとも私が今まで見てきたゴーレムたちはそうでした。
 ゴーレムたちにとって、魔王さまはこの場所の侵略者に見えたのでしょう。だからこうして、逃げずに必死に戦いを挑むのでしょう。
 それは、分かっています。
 けれど、私の頭の中では、もう一つの別な考えが、どうしようもなく鎌首をもたげるのでした。
 彼らはこの場所を守るために戦いながらも、きっと知っていたのです。
 長い歴史を持つ土地に自然と生まれたゴーレムは、英知を宿した自然の賢者です。だから、きっと彼らは知っていたのです。
「魔王からは逃げられない。」
 と。
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Author:しらゆき
メイプルストーリー、いばらでのんびり遊んでます。

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