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魔王城へようこそ!(バレンタイン特別篇2)
 今日は2月14日。
 つまり、今日はバレンタインデーだわ。
 バレンタインデー。
 女の子が男の子にチョコを贈る日。
 もしくは男の子が女の子にお花を贈る日。
 そしてわらわにとってバレンタインは、お城の皆からチョコをもらう日だった。
 魔王城で働くたくさんの従者たち。その中でもわらわと特に仲の良い人たちは、わらわにチョコをくれるのだった。
 お菓子作りが得意な人は手作りで。そうでない人はお店で買ってきて。
 手作りのチョコには試行錯誤のアイデアがたくさん詰まっていてとても素敵だし、お店で買ったチョコには一体どれにしたらいいんだろうかというどこか楽しげな悩みが詰まっていて素敵だった。
 そして今年も、皆にもらったたくさんのチョコを抱えて、わらわは自室へと帰ってきた。
 廊下の道すがら、狙いすましたように姿を現してはわらわにチョコをプレゼントしてくれた、たくさんの仲良したち。
 彼らのくれたチョコをテーブルの上に置いて、しばらくそれを見詰めた後で、わらわは窓際にある自分のベッドへと身を投げる。
 ベッドにうつぶせになって寝転がり、首だけ曲げて見遣るテーブルの上の、たくさんの甘くてほろ苦いお菓子。
 オーソドックスな茶色いチョコに、ピンクのストロベリーチョコ、雪のように白いホワイトチョコ。チョコはそれぞれ様々な形をしていて、その楽しげな形を様々なトッピングで彩っていた。
 キラキラ光る大粒小粒のアラザンは真珠のようだったし、チョコにまぶされた粉砂糖はちょうどこの季節最後の粉雪のようだった。そしてドライフルーツの真っ赤なイチゴはこの先に待つ春の訪れを感じさせた。
 チョコは、楽しげな形に色とりどりのトッピングで着飾り、まるでおめかしをしているようだった。
 テーブルの上に広がる、魔法の景色。
 昔、フレデリカが言っていた。
 お菓子は魔法だって。
 楽しい時間とお喋りを、甘い思い出で彩る魔法。
 大切な誰かを笑顔にする、お菓子の魔法。
 ・・・・・・。
 わらわはテーブルから視線を外して、顔を枕にうずめて目を閉じる。
 チョコを貰えたのは、嬉しい。
 たくさんチョコを貰えたわらわは、けれど誰かにチョコを上げたことはない。わらわはいつもホワイトデーにお返しをするから、バレンタインに誰かにチョコを上げたことはないのだ。
 いつもそうだったし、わらわにとってもわらわにチョコをくれた皆にとっても、それが当たり前のことだった。
 けれど今は何故だか気になってしまう。
 今年のバレンタインは、誰かに何かをプレゼントしたかった。
 ううん、誰かにではない。
 わらわには確かに、気になっている人がいるのだ。
 わらわはその人に、バレンタインの魔法をプレゼントしたかった。
 けれど、夜も更けて、今更チョコを作るような時間はなかった。
 わらわはずっとそのことを気にかけていながらも、ずるずると何もせずに今日と言う日を過ごしていたのだ。
 忙しかったとか、チョコを作ったことが無いとか、そういうことではない。
 チョコを作って、それをその人にプレゼントするということが、どうにも憚られたのだ。
 わらわはあの子に、嫌われているから。
 ふと、枕にうずめた顔を上げて窓の外を見る。
 夜の帳が下りて、停滞したような空気の中で、しかし静かに吹くそよ風の中で、揺れる青い花びらが見えた。

 青い花びらが揺れる中に、わらわは居た。
 星明りと月明かりを受けてぼんやりと青白く輝く花びらは、とても美しかった。
 その華奢な茎に、どこか儚げな青い花びらを付けた姿は、なんというか、この世のものではなかった。
 花を見詰めて、しゃがみ込む。
 その一本に、そっと手をかける。
「魔王さま。」
 花を摘む、直前。
 後ろから声が聞こえた。
 わらわは花を摘みかけたその恰好のままで固まってしまう。
 振り返ることもせず、花を摘んでしまうことも無く。
 華奢な茎に手をかけたまま、背中でその声を聞く。
「こんなところで何してたんですか。相変わらずですね気ままですね。」
 何してたんですかと言いながら、その言葉に疑問の調子は含まれていなかった。
 質問しているのではなく、呆れているのだ。
 この子はいつもわらわに呆れて、そして皮肉を言ってくる。
 もしくは無視するか、もしくは唐突に鋭利な魔法を放って殺してくるか。
 もう、何度この子に殺されたか分からない。
 なのに、わらわはこの子のことが気になってしかたがないのだ。
「花が、欲しくなって。」
「花?」
 この子は質問なんてしていなかったけれど、わらわは自分がどうしてここに居るのかを告げてみせる。
「そうよ、花。」
「花なんて、何もこんな時間に摘みに来なくてもいいじゃないですか。寒いでしょう。」
 言われて気が付く。
 寒い。
 言われて初めてそれに気付いて、わらわは思う。
 どうしてそんなことに気付かなかったのだろう。
「そうね、寒いわ。」
「なら、なんで・・・。」
「どうしても、今日のうちに欲しかったから。」
 言って、わらわは花の華奢な茎にかけた手を、クイと引く。
 音も無く茎は切れて、花はわらわの手中に収まった。
「綺麗ね。」
 言いながら、振り向く。
「これを、貴女に上げたくて。」
 静かに言いながらも、唐突な彼女の出現に混乱してしまって仕方のなかったわらわは、前置きも、雰囲気も、全部無視して彼女に花を差し出した。
 そして、差し出した花の先に見える彼女の手には、可愛らしい包装の箱が収まっていた。
 まるで、お菓子をつめたような、可愛らしい箱。
「・・・・・・。」
 彼女は、黙って花を見ていた。
 そしてやがて、言うのだった。
「魔王さまは嫌いだけど・・・、」
 お決まりのこの台詞。
 それを聞くわらわは、自分がその言葉に傷ついているのか、それとも慣れてしまって何も感じていないのかも分からない。
「花は、嫌いじゃないです。」
 そしてゆっくりと続いたその言葉に、今度はわらわは安堵する。
 それはつまり、花を受け取ってもらえるということだったから。
「だけど、魔王さまは嫌いなので、魔王さまに借りを作るような真似はしたくないです。」
 彼女はそう言って、手に抱えた可愛らしい箱を差し出した。
「だから、これと交換しましょう。それで、おあいこです。」
 流れのままに、ぼんやりとした頭でその箱と花を交換するわらわ。
 箱からは、そよ風に乗ってふんわりと、チョコの香りがした。

 後から聞いてみたところ、それはベアトが初めて作ったチョコだったのだそうだ。
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Author:しらゆき
メイプルストーリー、いばらでのんびり遊んでます。

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