ダークヒーロー★しらゆき(118) 魔王様とリベンジの誓い
2015-02-23(Mon)
この世界に初めてやってきた時、わらわはエリニアの深い森の中へと降り立った。そんなわらわはここヘネシスへとやってくるまで、この世界の空と言うものを知らなくて、だから森を出てあの青く輝く空を見た時は、柄にもなく感動したものだったわ。
かつて通った、青く輝く空の下の、柔らかな下草に包まれた草原の街道。
あぁ、わらわの居た世界と同じ空だ。なんて思いながら、新鮮な気持ちでかつて通ったその道は、今では随分見慣れた道だけれど、それでも今の気持ちはかつてと同じくらいに新鮮と言うか、鮮やかなものだわ。
わらわ達はヘネシスを発って、この青い空を通して、そしてこの街道を通して続く、この大陸の別な街へと向かっているわ。
エリニアと、ヘネシス。
魔力に満ちた深い森と、そよ風に揺れる草原。
二つの街を、二つの地域を、制覇したわらわ達は、その森と草原以外のどこかへと向かって、こうして歩いている。
行く当ては、はっきり言うと無いわ。
けれどこの街道に沿って歩けば、必ずどこかの街に繋がっていて、そしてそこにはきっとヘネシスの草原に住むものよりも強いモンスターがたくさん住んでいて、そんなモンスター達と戦って、わらわはもっと強くなっていくのだ。
少し遠くに、街道の中心にあるあの大きな樹が見えてきた。
もうすぐ、分かれ道だわ。
どの方向に向かおうかしら。そう言えば、海へと続く道もあったわよね・・・。海はちょっと見てみたいけれど、ベアトが嫌がるし・・・。それにこれは修業のための旅なのだから、出来るだけ過酷な環境に身を置きたいわ。まぁ、過酷な環境なんて、ベアトは海以上に嫌がるでしょうけどね。でも、この子はきっとどこへでもついてくるし、今更遠慮なんていらないわ。

魔王さま・・・。
明るい空の下、そんな風に考え事に沈んでいると、ふいにベアトが声を掛けてきた。心なしか、元気の無い声だわ。

アレ・・・。
そう言って、やはり元気の無い声で言うベアト。彼女は少し遠い目をして前方を指さしている。彼女の指さす、その場所を見れば・・・、

ヘレナ、ね。
大陸最強の弓使いが、草原に住む凛々しいエルフが、そしてわらわを圧倒的な力で組み敷いた彼女が、そこには立っていた。

・・・・・・。
彼女は何も言わず、少し離れたところに立っている。
ただ淡々と、あの凛々しい表情を湛えて、エルフ特有の鋭い耳に、彼女特有の鋭い目付きを携えて、ただ立ってわらわ達の方を見ている。
鮮やかな緑あふれる草原に吹くそよ風に、同じく、いえ、それ以上に、鮮やかな緑をした彼女の長い髪が揺れている。
そんな彼女に、わらわ達もまた何も言わずに、淡々と近づいていく。
何故なら彼女は、わらわ達の通り道に立っているから。わらわ達の行く手を、遮るかのように立っているから。
彼女の揺れる緑の髪。
わらわの揺れる黒い髪。
こうして比べてみると彼女の髪はどちらかと言うと軽い印象で、わらわの髪は重めの印象だった。
二人そろってそよ風に長い髪を揺らして、わらわ達の距離は縮まっていく。

・・・行くんですね。

そうね。
距離を縮めて、何も言わない彼女の脇を通り過ぎるまさにその時、彼女は小さく声を掛けてきた。

安心した?魔王が街から去って。

安心も何も、貴女が居た所で街の脅威にはなりません。
わらわの皮肉に対して、彼女はさらに皮肉を重ねる。
弓の腕前もだけれど、口先もえげつないわね、こいつは。
そう思って、しかしわらわは少しだけ可笑しくなる。これが、魔王たる者の余裕というものよ。

そうかもね。いえ、むしろわらわはキノコなんかをたくさん採ってきてあげていたから、むしろ街は助かっていたんじゃないかしら?

・・・・・・。
彼女のえげつない皮肉に対して、重ねるわらわの更なる皮肉。
皮肉の、応酬。
どこか刺々しいわらわ達のやり取りは、しかし先の命のやり取りよりもいくらか和やかなものだった。
わらわ達の間には和やかな雰囲気なんて決して流れていないけれど、それでもあの時のものと比較すればそれは十分和やかなものだと言えたし、彼女は、なんというか、先の時よりも角が取れたように見えた。
彼女は相変わらず目を鋭くして、どこか怒ったような無表情を湛えて、つんけんしているけれど、何故かわらわは、彼女にそんなものを、不思議な丸みのようなものを感じたわ。

キノコなんて・・・。
キノコなんて、何なのだろう。
わらわは彼女の続く言葉を待ったけれど、しかしその先は聞けずじまいだった。

・・・・・・。この先の大陸の中心から、東に行くと・・・、
キノコの話をしていたと思ったら、彼女は不意に地理の話を始めた。
きっと、わらわのキノコの話に対して、返す言葉が何も思い浮かばなかったのだろう。だって皆、確かにわらわの採ってきたキノコを喜んでいたもの。ふふん。

ペリオンという、荒野に建つ戦士たちの村があります。
地理の話を始めた彼女は、訥々とした口調で、その東に向かった先にあるものをわらわに教えてくれた。

貴女は戦士ではありませんが、見た所、近距離戦を好むようですし、戦士が向いているかもしれません。まぁ、どういうわけか強い魔力も感じますから、魔法使いも向いていそうですが。
訥々とした口調はいつの間にか早口になっていた。
早口でわらわを、これは、褒められたのよね?
少なくとも魔力のことは褒められたわ。褒められた気がする。
彼女はそんな早口でわらわにわらわの適性を告げた。
一体どういうつもりかは皆目分からなかったけれど、この早口が照れ隠しであることだけは分かったわ。可愛いところもあるのね、こいつ。

そう。ありがたいお話ね。
そんな新たな一面を見せた彼女に、しかしわらわは辛辣な言葉を告げる。告げなければならない。

けれど、わらわは魔王だから、転職はしないわ。わらわの職業は戦士でも魔法使いでもなく、魔王。
そう、わらわは転職をするわけにはいかないのだ。だから彼女に、辛辣な言葉を告げた。

まぁ、巷では初心者ともいうらしいけどね。
軽い皮肉を添えて。

・・・・・・。
わらわの言葉を聞いたヘレナはまた黙ってしまった。
怒ったような無表情は全く変わっていないのに、今その表情は、何故か不機嫌な仏頂面のように見えた。
せっかくアドバイスしてあげたのに!ってところかしらね?

けれど・・・、
だけど、ヘレナのアドバイスは決して無駄にはならず、わらわの役に立ったのだった。

わらわはちょうど過酷な環境に身を置きたいと思っていたし、わらわの獲物はこの鉾だから、その戦士の村とやらには興味があるわ。
そのわらわの言葉に、彼女はちらりとわらわを見た。

せっかくだから、そこに行ってみようかしらね。

・・・・・・。
そう言って、再び歩き出すわらわ。
そしてそんなわらわをちらりと見たのを最後に、今は一瞥もせず振り返りもせず、沈黙でわらわを見送るヘレナ。

いつか戻って来るわ。その時は覚悟していなさい。
沈黙するヘレナの背中に、わらわもまた背中越しに告げる。

その時は貴女をやっつけて、本当にヘネシスを征服してやるんだから。
トタトタと、ベアトが慌てて追いかけてくる気配だけを背中に感じる。
ヘレナは何も言わないし、何もしてこない。
だけど、最後に。

えぇ、いいでしょう。
彼女は冷たい声でそう言った。

やれるものなら、やってみてください。
次の目的地が決まった。
戦士の村、ペリオン。

もー、いきなり修羅場が始まるからビックリしましたよ!

ふはは!わらわはヘレナなんか怖くないわ!
かつて通った、青く輝く空の下の、柔らかな下草に包まれた草原の街道。
あぁ、わらわの居た世界と同じ空だ。なんて思いながら、新鮮な気持ちでかつて通ったその道は、今では随分見慣れた道だけれど、それでも今の気持ちはかつてと同じくらいに新鮮と言うか、鮮やかなものだわ。
わらわ達はヘネシスを発って、この青い空を通して、そしてこの街道を通して続く、この大陸の別な街へと向かっているわ。
エリニアと、ヘネシス。
魔力に満ちた深い森と、そよ風に揺れる草原。
二つの街を、二つの地域を、制覇したわらわ達は、その森と草原以外のどこかへと向かって、こうして歩いている。
行く当ては、はっきり言うと無いわ。
けれどこの街道に沿って歩けば、必ずどこかの街に繋がっていて、そしてそこにはきっとヘネシスの草原に住むものよりも強いモンスターがたくさん住んでいて、そんなモンスター達と戦って、わらわはもっと強くなっていくのだ。
少し遠くに、街道の中心にあるあの大きな樹が見えてきた。
もうすぐ、分かれ道だわ。
どの方向に向かおうかしら。そう言えば、海へと続く道もあったわよね・・・。海はちょっと見てみたいけれど、ベアトが嫌がるし・・・。それにこれは修業のための旅なのだから、出来るだけ過酷な環境に身を置きたいわ。まぁ、過酷な環境なんて、ベアトは海以上に嫌がるでしょうけどね。でも、この子はきっとどこへでもついてくるし、今更遠慮なんていらないわ。

魔王さま・・・。
明るい空の下、そんな風に考え事に沈んでいると、ふいにベアトが声を掛けてきた。心なしか、元気の無い声だわ。

アレ・・・。
そう言って、やはり元気の無い声で言うベアト。彼女は少し遠い目をして前方を指さしている。彼女の指さす、その場所を見れば・・・、

ヘレナ、ね。
大陸最強の弓使いが、草原に住む凛々しいエルフが、そしてわらわを圧倒的な力で組み敷いた彼女が、そこには立っていた。

・・・・・・。
彼女は何も言わず、少し離れたところに立っている。
ただ淡々と、あの凛々しい表情を湛えて、エルフ特有の鋭い耳に、彼女特有の鋭い目付きを携えて、ただ立ってわらわ達の方を見ている。
鮮やかな緑あふれる草原に吹くそよ風に、同じく、いえ、それ以上に、鮮やかな緑をした彼女の長い髪が揺れている。
そんな彼女に、わらわ達もまた何も言わずに、淡々と近づいていく。
何故なら彼女は、わらわ達の通り道に立っているから。わらわ達の行く手を、遮るかのように立っているから。
彼女の揺れる緑の髪。
わらわの揺れる黒い髪。
こうして比べてみると彼女の髪はどちらかと言うと軽い印象で、わらわの髪は重めの印象だった。
二人そろってそよ風に長い髪を揺らして、わらわ達の距離は縮まっていく。

・・・行くんですね。

そうね。
距離を縮めて、何も言わない彼女の脇を通り過ぎるまさにその時、彼女は小さく声を掛けてきた。

安心した?魔王が街から去って。

安心も何も、貴女が居た所で街の脅威にはなりません。
わらわの皮肉に対して、彼女はさらに皮肉を重ねる。
弓の腕前もだけれど、口先もえげつないわね、こいつは。
そう思って、しかしわらわは少しだけ可笑しくなる。これが、魔王たる者の余裕というものよ。

そうかもね。いえ、むしろわらわはキノコなんかをたくさん採ってきてあげていたから、むしろ街は助かっていたんじゃないかしら?

・・・・・・。
彼女のえげつない皮肉に対して、重ねるわらわの更なる皮肉。
皮肉の、応酬。
どこか刺々しいわらわ達のやり取りは、しかし先の命のやり取りよりもいくらか和やかなものだった。
わらわ達の間には和やかな雰囲気なんて決して流れていないけれど、それでもあの時のものと比較すればそれは十分和やかなものだと言えたし、彼女は、なんというか、先の時よりも角が取れたように見えた。
彼女は相変わらず目を鋭くして、どこか怒ったような無表情を湛えて、つんけんしているけれど、何故かわらわは、彼女にそんなものを、不思議な丸みのようなものを感じたわ。

キノコなんて・・・。
キノコなんて、何なのだろう。
わらわは彼女の続く言葉を待ったけれど、しかしその先は聞けずじまいだった。

・・・・・・。この先の大陸の中心から、東に行くと・・・、
キノコの話をしていたと思ったら、彼女は不意に地理の話を始めた。
きっと、わらわのキノコの話に対して、返す言葉が何も思い浮かばなかったのだろう。だって皆、確かにわらわの採ってきたキノコを喜んでいたもの。ふふん。

ペリオンという、荒野に建つ戦士たちの村があります。
地理の話を始めた彼女は、訥々とした口調で、その東に向かった先にあるものをわらわに教えてくれた。

貴女は戦士ではありませんが、見た所、近距離戦を好むようですし、戦士が向いているかもしれません。まぁ、どういうわけか強い魔力も感じますから、魔法使いも向いていそうですが。
訥々とした口調はいつの間にか早口になっていた。
早口でわらわを、これは、褒められたのよね?
少なくとも魔力のことは褒められたわ。褒められた気がする。
彼女はそんな早口でわらわにわらわの適性を告げた。
一体どういうつもりかは皆目分からなかったけれど、この早口が照れ隠しであることだけは分かったわ。可愛いところもあるのね、こいつ。

そう。ありがたいお話ね。
そんな新たな一面を見せた彼女に、しかしわらわは辛辣な言葉を告げる。告げなければならない。

けれど、わらわは魔王だから、転職はしないわ。わらわの職業は戦士でも魔法使いでもなく、魔王。
そう、わらわは転職をするわけにはいかないのだ。だから彼女に、辛辣な言葉を告げた。

まぁ、巷では初心者ともいうらしいけどね。
軽い皮肉を添えて。

・・・・・・。
わらわの言葉を聞いたヘレナはまた黙ってしまった。
怒ったような無表情は全く変わっていないのに、今その表情は、何故か不機嫌な仏頂面のように見えた。
せっかくアドバイスしてあげたのに!ってところかしらね?

けれど・・・、
だけど、ヘレナのアドバイスは決して無駄にはならず、わらわの役に立ったのだった。

わらわはちょうど過酷な環境に身を置きたいと思っていたし、わらわの獲物はこの鉾だから、その戦士の村とやらには興味があるわ。
そのわらわの言葉に、彼女はちらりとわらわを見た。

せっかくだから、そこに行ってみようかしらね。

・・・・・・。
そう言って、再び歩き出すわらわ。
そしてそんなわらわをちらりと見たのを最後に、今は一瞥もせず振り返りもせず、沈黙でわらわを見送るヘレナ。

いつか戻って来るわ。その時は覚悟していなさい。
沈黙するヘレナの背中に、わらわもまた背中越しに告げる。

その時は貴女をやっつけて、本当にヘネシスを征服してやるんだから。
トタトタと、ベアトが慌てて追いかけてくる気配だけを背中に感じる。
ヘレナは何も言わないし、何もしてこない。
だけど、最後に。

えぇ、いいでしょう。
彼女は冷たい声でそう言った。

やれるものなら、やってみてください。
次の目的地が決まった。
戦士の村、ペリオン。

もー、いきなり修羅場が始まるからビックリしましたよ!

ふはは!わらわはヘレナなんか怖くないわ!
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