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ダークヒーロー★しらゆき(134)       魔王様と荒野の朝
 止むことなく常に吹き続ける乾いた風の中で、その中でも轟と唐突に強く吹いた一陣の風が岩壁に叩きつける音が耳に肌に、響き、砂煙を含むどんよりとした雲に覆い隠され遮られながら、それでもあの朝特有の静謐さを持って、澄んだ白を基調として、しかしあのどんよりとした雲を透かしたことで灰色になった太陽の光が瞼を透かして差し込んで、わらわは目を覚ました。
 朝とは、独特の静謐さを持った静かな時間。
 この荒野には常に止むことなく吹き続ける風の音、それからその風に吹かれ転がる石ころの音に風が岩壁を叩く音、そんな主として風による音が満ち満ちているけれど、月明かりに照らされた夜にしろ、この何とも言えない朝の静謐さにしろ、辺りに満ちる音とは切り離された確かに静かな時間が、ここにはあった。
 そんな朝。
 最早見慣れた、荒野の朝。
 目の前にはすっかり焼け落ち炭となった薪の山と、その向こうでスヤスヤと気持ち良さそうに寝息を立てるベアトの姿。
 これまた見慣れた、荒野の朝の光景の一角。
 そんな薪とベアトを見ていると、ふとこの二つは案外似ているということにわらわは気が付く。
 あれだけパチパチと爆ぜて勢いよく燃えていた薪は今やすっかり燃え落ちて、冷たく静かな物言わぬ炭と化している。
 一方ベアトも、スヤスヤと寝息こそ立ててているものの、その眠りの中を彷徨う姿は静かそのもので、深い眠りを過ぎて意識が徐々に浅い淵へと浮き上がりつつあるベアトの体温は決して高いとはいえず、その証拠にその頬は普段の紅潮を引き下げて、抜けるような白を、冷たさすら感じる白をしていた。
 そんな静かな、薪とベアト。
 その静かさが、わらわは似ていると不意に思ったわ。
 とは言っても、薪は今や完全に炭となりもはやそこに火を燈そうとも、火は炭となった薪を燃料に燃え上がることは出来ず、またもはや火も燈せずそれ故「薪」というモノとしての命を終えていると、「薪」というモノの屍と言えたわ。命を終えた薪は、ただただ冷たい。
 しかし一方のベアトは決して物言わぬ屍などではなく、スヤスヤとした寝息を静かに立てる生きているもので、だから冷たさすら感じる白い頬の奥にはちゃんと温かな体温があって、だからその意味でこの似ている二つは決定的に違っていると言えた。
 そんな新たな気付きこそあれど、やはり見慣れた荒野の朝の光景。
 静謐な灰色に照らされた岩場と、そこに眠る薪とベアト。
 この荒野へと修行に出てきて、早数日が経っていた。
 野宿生活ももう随分と板についたし、スタンプ達との戦いも板についていた。
 街からどんどんと離れて荒野を奥へと進んでいき、その最中で注意深く辺りを見渡しわらわ達は宿営するのにちょうどいい岩陰をいくつか見付けていた。中でも荒野ではとても貴重といえる湧き水の湧き出す水場がそばにある場所は虎の子で、湧き水が湧き出しているだけでも貴重だからという理由で、その場所は使わずに何かの時のためにしっかり場所を覚え、頭の中に緊急の休息場としてストックしてある。
 今居るここは、そんないくつかある拠点の中でも奥まった場所にある、休息地の一つだった。
 荒野に出てきてからわらわ達は、日中はスタンプ達と戦いそれを修業とし、またその戦いの副産物とも言えるスタンプの落としていった木の枝なり薪になる木などを拾い集め、夜はそれを組んで焚火を焚き、二人静かに過ごしていた。
 わらわがスタンプと戦い、ベアトは離れて遠くからそれを眺める日々。
 ベアトはわらわの戦いぶりを白熱したように見守っていることもあれば、視線こそわらわに向けていてもどこか上の空で、考え事をしている時もあった。
 またわらわも、たくさんのスタンプ達と戦うことで、修業としての手ごたえを確かに感じていた。
 スタンプにはどうやら色々な種類が居るようで、最初に戦った普通の切り株のスタンプも居れば、それをまるで焦がしたかのように色を黒くしたもの、さらには切り株の頭に斧が突き刺さったものも居れば、斧の代わりに新芽を生やしたものも居た。
 中でも新芽を生やしたものの中には時折変わった・・・、言ってしまえば不埒な、いやらしい目付きをしたものが居て、彼らはスタンプ特有のその一つ目を弓の弦のように大層いやらしい笑みの形に歪め、頬を赤らめ、遠くでわらわの戦いを眺めるベアトを見付ければ彼女の方へと走っていき、逃げるベアトを追いかけまわしたりしていた。
 わらわはそんなベアトを追いかけまわすスタンプをさらに追いかけまわし、やがて追いついて走る勢いのまま鉾で叩きつければ、そのスタンプはわらわと同じく走る勢いのまま今度は転び、ズザーと痛々しい音を立てて荒野の岩場を滑って行った。しかしそれでもそのスタンプは起き上がってベアトを追いかけ続けようとするので、わらわはそのスタンプをさらに叩きつけるのだけれど、スタンプは叩かれるたびにあの歪んだ笑みをさらに歪めて頬もさらに赤らめて、荒い呼吸をしていた。
 ・・・・・・。
 まぁ、スタンプにも、モンスターにも色々居るってことね。
 流石にあれは、久しぶりに本気で気持ち悪いと思ったわ。
 とは言え、それも含めてスタンプ達との戦いは確かにわらわの力へと繋がった。
 硬い木の皮を持ち、荒野で生き抜いてきた高耐久なスタンプ達へ攻撃を加えるたびに、わらわの振り抜く鉾の一閃は研ぎ澄まされていき、どうすればそんな硬い身体と強い体力を持つ相手を効率的に痛めつけられるかを学ぶことが出来た。
 また逃げ惑う・・・、いえ、この場合はベアトを追いかけるあのいやらしいスタンプをわらわがさらに追いかけているのだけれど、走っているものを追いかけるという意味では逃げ惑うモノを追いかけるのと同じね。とにかく逃げ惑う相手を追いかけて撃墜するということにも、いくらか慣れることが出来た。
 唐突に走り出した相手に瞬時に反応して追いかけて、出来るだけ素早く撃墜するのには慣れが必要だわ。唐突な敗走に驚かない慣れと、瞬時に追いかけ、また追いつけば走る速度につんのめることなどなく、その速度を利用してより強い一撃で相手を打ちのめすということを、わらわは学んだ。
 そう、痛めつけ、打ちのめす。
 わらわは偉大なる魔王。
 痛めつけ、打ちのめすなんて、如何にも魔王らしい恐ろしい響きじゃない?
 あーっはっはっはっはっはっ!!
 とにかくそんな感じに、わらわとベアトはこの荒野での修行生活を満喫していた。
 わらわはより強くなったし、ベアトも初め程文句を言わなくなった。
 ベアトは戦うわらわを眺めながら、また夜の闇に揺れる焚火を眺めながら、たくさん考え事をしていたみたいだし、彼女の中にあるなにがしかの考察も深まったでしょう。
 それはわらわのお付きであり、参謀としての役割の強いベアトには必要なことだし、また魔法使いであるベアトには、その考察こそが修業になると言えるのだ。
 とは言え、この子のことだから、しょうもない事ばかり考えていそうだけれどね。
 まぁ、今はそのことは置いておきましょう。
 やがて見ることになるであろうこの子の魔法を見れば、この子の考察がどんなものだったかは知れることになるわ。

 そんな風に考え事に区切りをつけて、ふと手元を見ると、鍋が良い感じに湯気を昇らせていた。
 わらわが朝起きてまずすることは、炭になってしまった薪をどけて、新しい薪を組み火を起こし、その上に木の枝を組んで作った吊るし台を設置して持ってきた鍋を吊るし、湯を沸かし朝食を作ることよ。
 小鍋の中では水場で組んで確保しておいた水が、ふつふつと煮え湯気を立てている。
 頃合いね。
 そう思ったわらわは荷物の中を探って、ヘネシスから持ってきた食料を鍋へと放る。
 食料は、主にキノコ。
 ヘネシスでたくさん採ったキノコは、リナとリナの近所へのお裾分けでなく当然わらわの手元にも残してあって、わらわはヘネシスの街を出る時にそれを荷物に詰めて持ってきたのだった。
 わらわの旅はあてもない旅。
 どこで食料に困るかなんてわかったものじゃなかったから、こうして最低限の準備は出来る限り万全にしておいたのだった。
 荷物の中にはキノコだけでなく、塩や胡椒をはじめとした粉状の、調味料も揃えてある。わらわはキノコを放り込んだ鍋にそれらをサッと適量振り、鍋の中身をくるくるとかき混ぜた。
 かき混ぜるわらわの動作に合わせて、ふつふつ煮える鍋から湯気と共に、いい匂いが立ち昇る。
 人里で、家の中で嗅ぐのとは一味違った、いい匂いだわ。
 たとえ同じ物を作っても、外で作る、外で食べる、その外というアクセントが加わるだけで、料理はその味をがらりと変える。
 そろそろ出来るわね。
 そう思ってベアトを起こそうとそちらの方を見遣れば、

もふもふベアト
うーん・・・
 と、匂いにつられたベアトはわらわに起こされるまでも無く自ら目を覚まそうとしていた。


もふもふベアト
あっさごはんー♪あっさごっはんー♪

魔王スタンプ(ヘネシス)
わらわの朝ご飯は天下一品よ!
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しらゆき

Author:しらゆき
メイプルストーリー、いばらでのんびり遊んでます。

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