ダークヒーロー★しらゆき(137) 魔王軍の食糧事情
2015-03-18(Wed)
まぁ、いくら必要ない。というか、なくても本当に死ぬことはないと言っても、食べ物は要るわよね。
主にわらわの餓死問題のために。
そしてわらわ以上に食べ物なんて必要ないのに、「ひもじい」なんて言うこの可愛らしいお付きのために。
さぁ、となると食べ物を探さなくっちゃね・・・。
いくら食べなくてもお腹が空くことはないと言っても、やっぱり食べ物は欲しいです。
というか、お腹はやっぱり空くんです。
お腹が空かないというのは、所謂空腹の状態にならないというだけであって、食べ物が無ければ満腹感を感じることも無ければ、それによる安心感を得ることも無いのです。
私の身体に宿った「食べ物が無くても生きていける」という魔法はそういうモノで、食べ物を取らなかった私はその身に宿す魔力によって、満腹でもない、空腹でもない、腹具合に置いては正に何の特徴も無い、平静の状態を維持するのです。
けれどそれでも、空腹にならないからと言って、食べ物を食べていないという事実までは消えてなくならないのです。
普段普通に食事を取っている生き物が急に食事を取らなくなると、例え魔法でお腹が空かなかったとしても心がそれに追いついてきません。
朝ご飯を食べてお昼ご飯を抜いても、身体は空腹を訴えませんが心が空腹を訴えます。
さらに夜ご飯を抜けば、身体は何ということはなくとも心がひもじさを覚えます。
そして翌朝何も食べなければ、身体には何一つ不都合はないのに、心に穴の、まるで食べ物が入っていなくて空っぽの胃袋にあいたような穴の、開いたような感覚が満ちてきます。
食べるという行為と、食べたという満たされる気持ちは、生き物が生きていくうえで必要なのです。
たとえ食べなくても平気な身体だったとしても、食べたという事実が心の栄養となり、心の命を繋ぐのです。
私の身体はお腹が空くことがありませんが、それでも私の心はお腹が空くのです。
まして身体は平気だと言っているのに、心はお腹が空いたと訴え続けるのです。
そのギャップに耐え続けるのは、それに慣れていてそれが当たり前だった昔ならまだしも、食事を取り身も心も満たされるのが当たり前となった今ではなかなかのストレスになります。
体と心の間にそんなギャップがあることは、そんな意外と大きな問題なのです。
さて、そんな訳で、食べ物は必要です。
魔王さまは食べなければ普通にお腹が空いて、そのまま放っておけばやがて餓死してしまうので、この食糧問題は私より切実に見えます。
確かにそれは事実で、お腹が空いて力が出なくなるのも魔王さまだけだし、生き返るとはいえお腹が空いて死んでしまうのも魔王さまだけです。
けれど魔王さまはそれ故に、体と心のギャップを感じることも無いのです。
その点では、魔王さま以上に私にとってこれは切実な問題と言えました。
と、そこまで考えて、私は一つのアイデアを思いつきました。

ねぇ、魔王さま。

なぁに?
魔王さまは、どこかこちらを見ていないような目で答えて、それからほんの少しだけハッとして私に意識を向けました。きっと今まで歩いてきた場所に食べ物がありそうな場所がなかったかどうか思い出していたのでしょう。
そのことを感じて、私も魔王さまに倣って荒野の景色を思い出そうかと思いましたが、その前に一つ、彼女に提案をしなければなりません。

魔王さまは、死んじゃっても生き返ります。

そうね。

そして私は、死んじゃったらそのまま。生き返るなんてミラクルは起こりません。

そうね。何をいまさらそんなことを言っているの?

そして今、私たちには食べ物がありません。
私の台詞をここまで聞いた魔王さまは、訝しげな表情になります。

貴女・・・。

私が死んじゃった魔王さまを食べれば万事・・・

「却下!

えぇ、でも・・・

黙りなさい。却下よ却下!
むぅ、冗談だったのに、物凄い勢いで却下されてしまいました。

全くもう、この子ったら。冗談でもそんなこと言うもんじゃないわ。それはとてもおぞましい行為で、そして同時にひどく美しい行為なのよ。だから冗談半分で手を出して良いものではないんだわ。

・・・・・・。
どうやら私の冗談は魔王さまの中の何かのセンスの琴線に触れてしまったかのようで、魔王さまは「とてもおぞましい」だけでなく「ひどく美しい」なんて言い出しました。
これ以上続けると、魔王さまのとんでもない闇のセンスを垣間見ることになりそうなので、私は口を閉じました。

まぁ、冗談はそれくらいにして、貴女も食べ物のことを考えなさい。
魔王さまもそれ以上その話を続けるつもりはないらしく、魔王さまの頭の中で行われていた作業を私にも手伝うように命じました。

この荒野で何か食べられるものを見なかったか、全力で思い出すのよ。

ご飯の在処を思い出せ!

思い出さなければ生き残れない!
主にわらわの餓死問題のために。
そしてわらわ以上に食べ物なんて必要ないのに、「ひもじい」なんて言うこの可愛らしいお付きのために。
さぁ、となると食べ物を探さなくっちゃね・・・。
いくら食べなくてもお腹が空くことはないと言っても、やっぱり食べ物は欲しいです。
というか、お腹はやっぱり空くんです。
お腹が空かないというのは、所謂空腹の状態にならないというだけであって、食べ物が無ければ満腹感を感じることも無ければ、それによる安心感を得ることも無いのです。
私の身体に宿った「食べ物が無くても生きていける」という魔法はそういうモノで、食べ物を取らなかった私はその身に宿す魔力によって、満腹でもない、空腹でもない、腹具合に置いては正に何の特徴も無い、平静の状態を維持するのです。
けれどそれでも、空腹にならないからと言って、食べ物を食べていないという事実までは消えてなくならないのです。
普段普通に食事を取っている生き物が急に食事を取らなくなると、例え魔法でお腹が空かなかったとしても心がそれに追いついてきません。
朝ご飯を食べてお昼ご飯を抜いても、身体は空腹を訴えませんが心が空腹を訴えます。
さらに夜ご飯を抜けば、身体は何ということはなくとも心がひもじさを覚えます。
そして翌朝何も食べなければ、身体には何一つ不都合はないのに、心に穴の、まるで食べ物が入っていなくて空っぽの胃袋にあいたような穴の、開いたような感覚が満ちてきます。
食べるという行為と、食べたという満たされる気持ちは、生き物が生きていくうえで必要なのです。
たとえ食べなくても平気な身体だったとしても、食べたという事実が心の栄養となり、心の命を繋ぐのです。
私の身体はお腹が空くことがありませんが、それでも私の心はお腹が空くのです。
まして身体は平気だと言っているのに、心はお腹が空いたと訴え続けるのです。
そのギャップに耐え続けるのは、それに慣れていてそれが当たり前だった昔ならまだしも、食事を取り身も心も満たされるのが当たり前となった今ではなかなかのストレスになります。
体と心の間にそんなギャップがあることは、そんな意外と大きな問題なのです。
さて、そんな訳で、食べ物は必要です。
魔王さまは食べなければ普通にお腹が空いて、そのまま放っておけばやがて餓死してしまうので、この食糧問題は私より切実に見えます。
確かにそれは事実で、お腹が空いて力が出なくなるのも魔王さまだけだし、生き返るとはいえお腹が空いて死んでしまうのも魔王さまだけです。
けれど魔王さまはそれ故に、体と心のギャップを感じることも無いのです。
その点では、魔王さま以上に私にとってこれは切実な問題と言えました。
と、そこまで考えて、私は一つのアイデアを思いつきました。

ねぇ、魔王さま。

なぁに?
魔王さまは、どこかこちらを見ていないような目で答えて、それからほんの少しだけハッとして私に意識を向けました。きっと今まで歩いてきた場所に食べ物がありそうな場所がなかったかどうか思い出していたのでしょう。
そのことを感じて、私も魔王さまに倣って荒野の景色を思い出そうかと思いましたが、その前に一つ、彼女に提案をしなければなりません。

魔王さまは、死んじゃっても生き返ります。

そうね。

そして私は、死んじゃったらそのまま。生き返るなんてミラクルは起こりません。

そうね。何をいまさらそんなことを言っているの?

そして今、私たちには食べ物がありません。
私の台詞をここまで聞いた魔王さまは、訝しげな表情になります。

貴女・・・。

私が死んじゃった魔王さまを食べれば万事・・・

「却下!

えぇ、でも・・・

黙りなさい。却下よ却下!
むぅ、冗談だったのに、物凄い勢いで却下されてしまいました。

全くもう、この子ったら。冗談でもそんなこと言うもんじゃないわ。それはとてもおぞましい行為で、そして同時にひどく美しい行為なのよ。だから冗談半分で手を出して良いものではないんだわ。

・・・・・・。
どうやら私の冗談は魔王さまの中の何かのセンスの琴線に触れてしまったかのようで、魔王さまは「とてもおぞましい」だけでなく「ひどく美しい」なんて言い出しました。
これ以上続けると、魔王さまのとんでもない闇のセンスを垣間見ることになりそうなので、私は口を閉じました。

まぁ、冗談はそれくらいにして、貴女も食べ物のことを考えなさい。
魔王さまもそれ以上その話を続けるつもりはないらしく、魔王さまの頭の中で行われていた作業を私にも手伝うように命じました。

この荒野で何か食べられるものを見なかったか、全力で思い出すのよ。

ご飯の在処を思い出せ!

思い出さなければ生き残れない!
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