ダークヒーロー★しらゆき(140) 魔王的キューティクル
2015-03-23(Mon)
この荒野にはいつでも乾いた風が吹いていて、砂や石ころを蹴散らし吹き飛ばしながら、砂煙を含んだ雲に遮られながらも強い日差しの中を、あてどなく走り抜けていきます。
風は私たちとのすれ違いざまに、私たちの髪を嬲り、肌を打ち、時には目に砂を飛ばしてきて、ただでさえ過酷なこの荒野の放浪をさらに辛いものへと変えてしまいます。
魔王さまの黒い影を先導に、私は荒野を彷徨っていました。
昨日までも私たちはそうしていましたが、今はそれとは少し違っていました。
昨日までは魔王さまの修練が主な目的で、だから魔王さまはモンスターと遭遇するたびに彼らを嗾けて、ところ構わずドンパチ戦っていましたが、今はモンスターとすれ違っても無視。ここで見かけるモンスターは切り株のスタンプばかりで、スタンプは大人しいモンスターなようで、こちらから何かしなければかかってくることもありませんでした。
魔王さまの長くてツヤツヤな黒髪は今や強い強い荒野の風に煽られてバサバサと広がり、そんな有様の髪にはその有様をもたらした風が運んできた砂埃がまとわりついて見るも無残な有様になっていました。癖っ毛の私が実は内心羨ましいと思っていた魔王さまの流れるような髪は今、私以上に絡まって広がって、何とも言えない、趣も風情もあったものではない状態になっていました。

あぁもう!うっとおしいわね。
そんな魔王さまは一声上げて、神を書き上げるような動作で頭を大きく一振りして、風を、砂埃を、振り払ってしまおうとしました。

こうよ!
バサっ!
魔王さまの髪がその動きに大きく振り乱されて、それと同時に髪にまとわりついた砂がまるで振り落されるように落ちて、風に乗って私の所まで飛んできました。

ぶへっ!
強風に乗って一気に私の鼻先まで殺到した、ただでさえ濃い砂埃に魔王さまの髪に溜まっていたものまで加わった砂埃は、思わず私にそんな声を出させました。

あら、ごめんなさい。
私のくしゃみは結構大きかったようで、強風に負けずに魔王さまの耳元まで届いていたようです。魔王さまは軽く私に謝って、

・・・くくっ。でも「ぶへっ!」って!「ぶへっ!」てなによ・・・!
吹き出すものを堪えるかのように、ひとしきり笑い私を馬鹿にしました。

・・・・・・。
ちくしょう。
なんてキューティクルだ。
普通あんなんじゃ絡みついた砂なんて取れないでしょ・・・。
魔王さまの髪は一瞬完全に元の流れるような艶やかさを取り戻し、そして今は再び風に煽れら砂埃を一から溜めなおしていました。
魔王さまは大体いつでも非常識だけれど、あの髪はもっと非常識です。
魔王の名前は伊達じゃないですね・・・。って関係ないか。
けれど、こんなやり取りすらも実は久しぶりで、魔王さまと私は今朝からずっと風に煽られながらこの荒野を彷徨っていました。
元から無口な私は魔王さまが居なかったら朝から晩までだんまりなんてこともよくあるのですが、それでもこの過酷な環境の中歩き続けたせいか、実際の時間よりも随分と久しぶりに、口を聞いたような気がしました。

・・・ふん。
私は一つ鼻を鳴らしてさっきまでの話に終止符を打ち、それから岩場にちょうど良いひび割れを見付けたので、そこにしゃがんで持ってきたスタンプの枝をそのひび割れに差し込みながら、言いました。

それにしても喉渇きました・・・。
口が喋ることになれていなかったので、そう言った私の言葉はどこかつっけんどんな、何とも言えない無表情なものになりました。長い年月をかけて岩すら削ってきた荒野の風に、情動すらも削られてしまったかのようです。

あら、そう?わらわは平気だけれど・・・。
この化け物め。
そんなんだから魔王なんて言われるんです。
魔王さまは相変わらず非常識の人外で、この乾燥この強風の中、喉が乾かないなんて抜かしました。
・・・あっダメだ。私ってばイライラしてる。

まぁでも、これじゃ喉も乾くってもんよね。
喉の渇いていない非常識な魔王さまは、けれども常識を考えて、常識的に考えた結果この環境の中では喉も乾くだろうと結論して、足を止めて私を見ました。

少し休憩にしましょうか。
休憩だそうです。
「やったっ・・・!
私の風に削られた情動も、その言葉に思わず蘇ってしまったようです。

ふふん、わらわのキューティクルはどんなもんよ!

ふんだ!
風は私たちとのすれ違いざまに、私たちの髪を嬲り、肌を打ち、時には目に砂を飛ばしてきて、ただでさえ過酷なこの荒野の放浪をさらに辛いものへと変えてしまいます。
魔王さまの黒い影を先導に、私は荒野を彷徨っていました。
昨日までも私たちはそうしていましたが、今はそれとは少し違っていました。
昨日までは魔王さまの修練が主な目的で、だから魔王さまはモンスターと遭遇するたびに彼らを嗾けて、ところ構わずドンパチ戦っていましたが、今はモンスターとすれ違っても無視。ここで見かけるモンスターは切り株のスタンプばかりで、スタンプは大人しいモンスターなようで、こちらから何かしなければかかってくることもありませんでした。
魔王さまの長くてツヤツヤな黒髪は今や強い強い荒野の風に煽られてバサバサと広がり、そんな有様の髪にはその有様をもたらした風が運んできた砂埃がまとわりついて見るも無残な有様になっていました。癖っ毛の私が実は内心羨ましいと思っていた魔王さまの流れるような髪は今、私以上に絡まって広がって、何とも言えない、趣も風情もあったものではない状態になっていました。

あぁもう!うっとおしいわね。
そんな魔王さまは一声上げて、神を書き上げるような動作で頭を大きく一振りして、風を、砂埃を、振り払ってしまおうとしました。

こうよ!
バサっ!
魔王さまの髪がその動きに大きく振り乱されて、それと同時に髪にまとわりついた砂がまるで振り落されるように落ちて、風に乗って私の所まで飛んできました。

ぶへっ!
強風に乗って一気に私の鼻先まで殺到した、ただでさえ濃い砂埃に魔王さまの髪に溜まっていたものまで加わった砂埃は、思わず私にそんな声を出させました。

あら、ごめんなさい。
私のくしゃみは結構大きかったようで、強風に負けずに魔王さまの耳元まで届いていたようです。魔王さまは軽く私に謝って、

・・・くくっ。でも「ぶへっ!」って!「ぶへっ!」てなによ・・・!
吹き出すものを堪えるかのように、ひとしきり笑い私を馬鹿にしました。

・・・・・・。
ちくしょう。
なんてキューティクルだ。
普通あんなんじゃ絡みついた砂なんて取れないでしょ・・・。
魔王さまの髪は一瞬完全に元の流れるような艶やかさを取り戻し、そして今は再び風に煽れら砂埃を一から溜めなおしていました。
魔王さまは大体いつでも非常識だけれど、あの髪はもっと非常識です。
魔王の名前は伊達じゃないですね・・・。って関係ないか。
けれど、こんなやり取りすらも実は久しぶりで、魔王さまと私は今朝からずっと風に煽られながらこの荒野を彷徨っていました。
元から無口な私は魔王さまが居なかったら朝から晩までだんまりなんてこともよくあるのですが、それでもこの過酷な環境の中歩き続けたせいか、実際の時間よりも随分と久しぶりに、口を聞いたような気がしました。

・・・ふん。
私は一つ鼻を鳴らしてさっきまでの話に終止符を打ち、それから岩場にちょうど良いひび割れを見付けたので、そこにしゃがんで持ってきたスタンプの枝をそのひび割れに差し込みながら、言いました。

それにしても喉渇きました・・・。
口が喋ることになれていなかったので、そう言った私の言葉はどこかつっけんどんな、何とも言えない無表情なものになりました。長い年月をかけて岩すら削ってきた荒野の風に、情動すらも削られてしまったかのようです。

あら、そう?わらわは平気だけれど・・・。
この化け物め。
そんなんだから魔王なんて言われるんです。
魔王さまは相変わらず非常識の人外で、この乾燥この強風の中、喉が乾かないなんて抜かしました。
・・・あっダメだ。私ってばイライラしてる。

まぁでも、これじゃ喉も乾くってもんよね。
喉の渇いていない非常識な魔王さまは、けれども常識を考えて、常識的に考えた結果この環境の中では喉も乾くだろうと結論して、足を止めて私を見ました。

少し休憩にしましょうか。
休憩だそうです。
「やったっ・・・!
私の風に削られた情動も、その言葉に思わず蘇ってしまったようです。

ふふん、わらわのキューティクルはどんなもんよ!

ふんだ!
スポンサーサイト