FC2ブログ
2018/12
≪11  1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20  21  22  23  24  25  26  27  28  29  30  31   01≫
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 
letter from Familia Master(三通目) 「初めまして、アリス。」
 彼女が登場するまで、思いの外時間がかかっちゃったなぁ。きっと愚痴を言い過ぎたのがいけなかったんだろうけれど、まぁ相当鬱憤溜まってたし、彼女も無事登場できたし、良いよね。

「ねぇ、絵を描いているの? 私にも見せてよ。」
 もう何年も前の事なのに、初めて彼女に声を掛けられた時のことは今でもはっきりと思い出せます。私は彼女の声が好きで、だから初めてそれを聞いた時のことも鮮明に覚えているんだと思います。それにやっぱり、彼女との出会いは衝撃だったからなぁ。
 嫌なことを心から追い出して、半ば無心、半ば夢見心地だった私は、一瞬その声が夢の中で聞こえた声で、それが現実のものだということに思い至りませんでした。だって彼女の声は穏やかな夢の中で聞くのに相応しいような、優しくて落ち着いた、理知的な響きを持っていたんだもの。私はそんな夢の中から聞こえたような彼女の声にうっとりして、そのまま本格的に眠ってしまいそうになったけれど、そのすぐ後にその声が夢の外、現実の方から聞こえてきたことに気付きました。
「誰・・・?」
 それで半分夢の中に居た私は慌てて駆け出して、夢の世界から現実の世界へと向けて全速力で走り抜けました。
 あの時の私の声は、さぞかし寝惚けて気の抜けた声だったんだろうなぁ。
 そんな寝惚け眼を擦って、少し垂れていたよだれを手の甲で拭きながら、私はキョロキョロと辺りを見回して、声の主を探しました。
「あれ?」
 だけど声の主は見つかりません。私は不思議に思いました。あれはやっぱり、夢の中の声だったのかな。
「どこ見てるの? こっちよ、こっち。」
 けれどやっぱり声はやっぱり現実のものだったようで、あたりをキョロキョロ見回す私に自分の居場所を知らせようと、彼女は私に再び声を掛けてくれました。なのに、声のした方を振り返ってみても誰も居ませんでした。どこもかしこも、緑キノコが居るばかり。
「どこ?」
「もうっ! ここだよ!」
 いつまで経っても声の出所を見付けられなかった私に、彼女も痺れを切らしたようでした。今思うと、あんな風に声を大きくする彼女は、珍しかったなぁ。
「えっ、緑キノコ?」
 今度こそ声のした場所をはっきりと感じ取り、彼女を見つけ出した私は驚きました。
 だってそこには、ピョンピョン飛び跳ねながら、自分はここだと主張する緑キノコが居たのですから。
「やっと気付いたわね・・・。」
 やれやれと、緑キノコ。
「緑キノコが、喋った・・・!」
「何よ、緑キノコが喋っちゃいけない?」
 ちょっとばかり不機嫌に言う緑キノコはどこか勝気な様子。
 これが私と彼女の出会いでした。この日彼女と出会って、何日か後に再開したところから、私の冒険は始まるのです。だけど今はもう少し、この日の話が続きます。
「私は緑キノコのアリス。貴女は?」
「私はしらゆき。えっと、人間で弓使い見習いをしているよ。」
 お互いに自己紹介をする私たち。
 自分の名前の前に丁寧に「緑キノコの」と付けるアリスに、私も自分が人間であることを説明してしまいました。可笑しいよねぇ、お互い見れば分かることなのにね。
「ふぅん、しらゆきね。良い名前ね。」
「ありがとう。アリスも可愛らしい名前だね。」
 私はお気に入りの名前を褒めてもらえたことが嬉しくて、お返しにアリスの名前も褒めてあげました。だって実際、良い名前だったからね。なんだかお伽噺にでも出てきそうな名前でしょ? そんな風にお互いの名前が気に入った私たちは、すぐに打ち解けることが出来ました。
 そして打ち解けた私たちはお互いのことに興味を持って、色んなことを質問し合い、自分のことを教え合いました。
 アリスは時々ここにやってきては絵を描いたり本を読んだり、それからお昼寝しては帰っていく私に、前から少し興味を持ってくれていたようです。私はヘネシスの街の外の場所ではこの場所が特に好きでした。ここは街から程よく離れていて静かで、それでいて通いやすい距離だし、見晴らしも良いし大人しい緑キノコたちがたくさん居るのが好きでした。アリスは自分もこの場所が好きだと言い、それから緑キノコが好きと言った私に対して、
「あら、緑キノコに生まれて得したわね。」
 なんて、冗談めかして言いました。
 それから、アリスの趣味は読書だそうで、勉強のためによく本を読んでいた私と話が合いました。だけど緑キノコが本を読むということに私は驚いて、一体どこでどんな風に読むんだろうと気になりました。でも、さっき「緑キノコが喋っちゃいけない?」って言われたばかりだったから、そのことは黙っておきました。
「そう言えば、しらゆきは弓使い見習いなんだよね。」
「うん、そうだよ。立派な弓使いになって、正義の冒険家になりたいんだ!」
「へぇ、正義の冒険家ね・・・。夢があるね。」
 いろんなことを話した私たちは、私の夢である冒険家についても話をしました。けれど、私は自分の夢のことを楽しげに話しながらも、肝心の修練がうまくいっていないことについては話しませんでした。だってここにはそれを忘れるためにやってきたんだし、アリスとお喋りしていて楽しかったんだもの。アリスには悪かったけれど、たまには嫌なこと忘れて逃げたって良いよね?
 私たちはそうしてあれもこれもたくさんのことを話して、青かった空が赤く染まった頃に、ようやくお別れして帰りました。その日の晩御飯はとても美味しかったのを覚えています。けれど、明日からのことを考えて寝付きが悪かったのも覚えています。アリスとのお喋りはとても楽しくて、確かに私の気持ちのモヤモヤを綺麗にはらしてくれたけれど、あの頃の私はやっぱり卑屈になっているところがあって、心も少し荒れ模様だったので、夜もすっかり更けるころには、モヤモヤは再び立ち込めて、私の気持ちをどんよりとさせました。
 さて、それからしばらく経ったある日。外はどんより曇り空で、今にも雨が降り出しそうな日でした。そんな天気で、しかも弓使い学院もその日はお休みだったので、私も他の弓使い見習い達も、それぞれ家や学校の量に篭って、自分の趣味や勉強に没頭していました。私は家でしばらく勉強してから、疲れたので途中まで読んだ小説の続きを読んでいました。その小説は私のお気に入りの、心の晴れるような物語だったのですが、この時ばかりはそれを読んでも私の心は曇り空のままでした。今にも泣き出しそうな空のせいで、外に出て修練出来ないことに私は苛立っていたのです。家の中で勉強をして、せめて弓使いに必要な知識を身に付けようとしたけれど、私にとって最も必要だったのは知識のための勉強ではなく強力な矢を射る力のための修練でした。幼い頃からいくら修練しても射る矢の威力が一向に上がらなかった私は、いよいよ焦っていたのです。焦って焦って、それを修練にぶつけて、それすらできないことに私は更なる焦りを感じました。
 そこで私は、もう居ても立っても居られなくなって、見習い用の一番弱い、けれど長年愛用して良く手に馴染んだ弓を持ち出して、曇り空の中へと飛び出していきました。

 今にも雨の降りだしそうな天気の中、家を飛び出した私はモンスターの住処となっている丘へとやってきました。
 目の前には空に立ち込める雲と同じ灰色の傘を持つキノコのモンスター達。彼らの名前はツノキノコ。その名の通り、灰色の傘には無数の鋭いツノが生えて、トゲトゲになっています。
 緑キノコの丘よりも街から離れたこの場所は、見習い弓使いのための修練場としてよく使われていました。緑キノコよりも強く気性の荒いツノキノコは、実戦訓練の相手に最適なのでした。
 とは言え、他の見習い達には手頃な相手でも、私にとってはだいぶ強敵です。
 心が追いつめられて家に居られなくなった私は、彼らと戦うためにここまで一目散にかけてきたのですが、いざツノキノコを前にすると躊躇いも生まれました。敵わない相手ではありませんが、何せ数が多いのです。一方私は今日は一人。いつもは他の弓使い見習い達と一緒にやってきて、私は持ち前の素早さと狙いの正確さで敵を翻弄しつつ、仲間の弓使い達に攻撃を任せているのですが、今日の私は一人です。確かに何本もの矢を使って数を当てれば二匹、三匹倒せないことも無いですが、多勢に無勢。並み居るツノキノコたちを全て相手にすることは私には出来ないでしょう。
 攻撃に威力がなく、相手を倒すのに時間がかかる私には戦法があって、それは何匹かを上手くおびき寄せて、出来るだけ一対一に近い状況を作って戦うという戦法で、しばらく私はそうやって戦っていました。何匹か、ツノキノコをやっつけることも出来ました。
 けれどいくらなんでも多勢に無勢。
 やがて体力も消耗し、戦法も立ちいかなくなってきて、徐々に私は追い詰められていきました。
 私の四方には、たくさんのツノキノコ。
 囲まれてしまい、それでも何とか戦おうと矢を射りますが、過たず命中する矢は相手に碌なダメージを与えることも出来ません。
 いよいよ追い詰められ、ツノキノコたちの包囲網を抜けることも出来なくなった私は、あぁ、いくらなんでもツノキノコ相手は無茶だったな。とか、所詮私はこんなもんか、一番弱いメイプルキノコくらいが、私に相手が出来る関の山なんだ。とかを、妙に静かな心で考えていました。
 攻撃態勢に入り、今にも襲い掛かってきそうなツノキノコ。
 絶体絶命のピンチなのに、私は何故か冷静で、まるで悟りでも開いたかのような境地に居ました。
 だけどやっぱり、痛いのは怖いわけで、一番大きな身体をしたツノキノコが先陣切って私に飛び掛かってくる瞬間、私はギュッと目を瞑って身体を固くして、痛みに備えました。
 だけど、いつまで経っても私は痛みを感じませんでした。何の攻撃も、受けませんでした。
 おかしいと思い、そろそろと目を開けると、そこには先ほど飛び掛かってきたツノキノコが倒れていました。
スポンサーサイト
 
Secret
(非公開コメント受付中)

プロフィール

しらゆき

Author:しらゆき
メイプルストーリー、いばらでのんびり遊んでます。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。